下書き うつ病勉強会#168 Psychomotor retardation-3

Psychomotor retardation については、精神活動の低下と言い換えられるが、シゾフレニーの場合の無為自閉とか感情平板化とどう違うのかと言えば、シゾフレニーの場合は Defect という言葉をあてる。欠損という意味である。たとえば「ジグソーパズルのピースが3個だけ見つかない、なくしてしまった」というときに、Defect という言葉を使うとのことだった。

一方で、Psychomotor retardation は『精神活動と身体運動の抑制』または『精神活動が抑制され、ときには精神活動抑制に起因する身体運動の減少』または『精神活動の抑制』などとやや曖昧な意味に拡散しつつある。

もともとは、psycho activity inhibition というくらいの意味ではないかと思う。精神活動の減退があるが、それはエネルギーがないのではなくて、モーターをブレーキが止めている、その様子を精神運動抑制と名付けたのだと思う。

精神が不活発になる状況としては、ブレーキのほかに、エネルギー低下も考えられる。そもそも精神モーターが動かないという状況である。

これらを並べてみると、

1.精神活動にブレーキがかかっている。(うつ病の精神運動抑制)

2.精神活動のエネルギーがない。(うつ病の精神エネルギー低下)

3.精神活動に必要な部品がいくつか欠損している。(シゾフレニーのディフェクト)

という具合になる。

精神活動の低下と言っても、とりあえずこれだけの種類は確実にありそうだ。

目の前にいる患者さんで、思考力減退、抑うつ的、意欲低下、感情の動き低下、体を動かすことも少ない、表情も乏しい、発話も少ない、というような一連の状態がある場合、上記の1.ブレーキ、2.エネルギーがない、3.部品の欠損、これらのどのあたりかを診断しなければならない。

そのためにとりあえず質問紙のように症状を並べて、そのどの項目で点数がいくつとか考えて、それを合計して鑑別できるものだろうか。

そうではなくて、この配置なら、奥にある構造はこんな風だろうという洞察とか直感とかひらめきのようなものが大切になるのかもしれない。その外挿の先には超越論的現象学 (transzendentale Phänomenologie) などの話があるが、個人的には実りは少ないと思うのでここでは触れない。

構造を感得するに至らない場合は、精神活動の低下、かつ骨格筋運動低下や表情筋運動低下、という具合に簡単に考えても、それほど間違いでもないような気はする。

精神活動低下かつ身体運動低下と解釈してしまうと、1.2.3.の間の区別はできそうにないが、それはそれでいいのだと思う。

幻聴と被害妄想があればシゾフレニーと診断するとか。あるいは自我障害がシゾフレニーの中核だとか。あるいはドパミン系の過剰活動だとか。単純化しすぎだとは思うが、それぞれで間違いではないだろうと思う。いろいろと言われていることの総合であるような気もする。言い方を変えれば、それぞれの意見はある程度正しくて、シゾフレニーと呼んでいるものの中にそれだけの種類のものが含まれているような気がする。そしてそれらはある程度連続している。だからどこで切ったらいいのか分からない。

うつ病とか双極性障害などもそのようなものだろうと思う。学問としてはもっと精密に分類する必要があるものだけれども、当面の治療にあたっては、そんなに精密に考えなくてもよい、という程度だろう。クリティカルでなくてもいい、プラグマティックであればいい。

Psychomotor retardation と Energy

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エネルギー水準の低下の原因となる主な病気は次のとおりです。
統合失調症
低カルシウム血症
適応障害
脱水症
急性扁桃炎・咽頭炎
睡眠障害
うつ病
脳梗塞
低ナトリウム血症
双極性感情障害

などと紹介してある文章もあり、つまり、シゾフレニーもバイポラーもデプレッションもエネルギー低下というのだそうだ。そのほかいろいろ。

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こんな紹介もある。間違ってはいない。

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でも、これで全部ともいえない。

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うつは、「心身のエネルギーが低下した結果、脳が司っている基本的な機能が低下して、感情をうまくコントロールできない状態」と理解してみましょう。

「感情をうまくコントロールできない」とは、うつの場合は「感情が湧かなくなってしまう」ことです。躁の場合だと「感情が湧き出しすぎてしまう」ことになります。

この「心身のエネルギー」を、車が走るために必要なエネルギー、つまり「ガソリン」にたとえてみましょう。もし給油せずい車を走らせてガソリンが切れてしまったり、あるいは故障でガソリンタンクからガソリンが漏れだし、無くなってしまったとしたらどうなるでしょう。

どちらにしても、車は動かなくなってしまいます。

この、車からガソリンがなくなった状態こそ、人の「うつ」状態です。

ガソリンが無くなりそうだと気がついたドライバーや助手席の人がすることは何でしょうか?

ガソリンを補給することですよね。ガソリン漏れがあれば、そこを修理してガソリンを補給します。

うつもこれと同じです。

まずは休養して足りなくなっているガソリン=心身のエネルギーを補給しなければなりません。しかし、単なる休養だけではエネルギーが充分に補給できないことがあります。

そのために、薬や治療としての面接(セラピー)といった、専門家によるケアが提供されているのです。

というような紹介もある。分かりやすいけれども、これで全部ではない。

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できれば、Psychomotor retardation なのか Enegy loss  なのか Defect なのか、鑑別できればいいと思う。できなくても心配はいらない。物事を単純に見る人は長生きする。悩まないほうがいい。

自然科学の真理は結局のところ、単純で、対称性があり、普遍的で、美しいものである傾向がある。その点では、単純に考えてどこまでいけるか試してみるのもいいことだと思う。いろいろな人がいたほうがいいだろう。

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