双極性スペクトラム概念はクレペリンに由来するものであるが、DSM-IIIで失われた。それまで躁またはうつの気分エピソードの「反復」経過によって定義されていたクレペリン主義の躁うつ病は広い概念だったが、レオンハルトによって双極と単極の二つに分けられて、躁またはうつの一度だけの気分エピソードによっても定義されるようになった。つまり、経過ではなく現在症によって分類されるようになった。
DSMのこのアプローチは、カール・レオンハルトやその他のクレペリン批判者の見解に従ったものである。1950年代にレオンハルトはクレペリンのMDIを双極性精神病と単極性再発性精神病に区分した。DSM-III 以降のアメリカの精神医学は、多くの人が主張するような新クレペリン主義者ではなく、新レオンハルト主義者である。アキスカルとココプロスによって最初に提唱された双極性スペクトラムのアプローチは、躁うつ病に対するクレペリンの元来の広い定義を思い出させる。この論文では双極性スペクトラム概念の賛否両論の証拠を議論し、境界性人格と双極性スペクトルは似ているという誤解について説明した。
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最初のころ、1970年代には単極性うつ病は重度の反復性うつ病を意味していた。
神経症性うつ病は重症ではなく、反復性ではなく、抑うつ性でもなく、エピソード性でもない。それは慢性で、不安症状が優勢で、恒常的である。この神経症性うつ病をDSM-3のMDDに取り込むために、診断基準が変更された。
病因の判断を避けるために「障害」という言葉が使われた。
そのようにして双極性障害とMDD大うつ病が生まれた。
それまで、単極性うつ病は3つ以上のうつ病エピソードがある場合だけ診断が下されていた。つまり、内因性・生物学的うつ病に限定されていた。DSM-3から神経症性うつ病もMDDに含まれることになった。
1980年にDSM-3でMDIは抹消され、意味の狭い双極性と雑多なMDDとに分割された。
双極スペクトラムは、クレペリン的なMDIに戻ろうとするものである。DSM-3のMDI抹消、雑多なMDDは正しかったのか、検証が必要である。
DSM-3では、「症状・家族歴・経過・治療反応・生物学的マーカー」の5つからなる精神医学的診断の妥当性をもとに構成され、BPとMDDに分類された。
BPはドパミン系が関与し、リチウムに反応した。MDDはノルアドレナリンとセロトニンが関与し、抗うつ薬に反応した。
レオンハルトの研究を裏付けるものとして、ぺリスの研究とアングストの研究があり、いずれも古典的である。
DSM-3の方針は20年間維持された。アキスカルは双極性障害と単極性障害の中間に位置する患者をたくさん発見した。彼は双極性/単極性の区別は維持しつつ、双極性のカテゴリーに双極スペクトラムを含むように広げることを提案した。
ローマのKoukopoulosは双極/単極の二分法の根拠として従来言われていたことが、確認できないことに気づいた。
多くの単極性患者は、抗うつ薬に反応しない、常識に反し再発しやすい、常識よりも発症年齢は早いなど、双極性の特徴を示していると考えた。
混合状態の頻度が言われているよりも高いことに気づいた。
1990年のグッドウィンの著書によれば、躁病患者の家系にはうつ病患者の家系と同程度またはそれ以上にうつ病患者がいた。またリチウムは双極性だけではなくうつ病にも有効だと指摘した。
2000年頃になるとカテコラミン仮説に問題があることも分かってきた。また非定型抗精神病薬が発売された。それは急性躁病に有効で、ときにはMDDにも有効だった。ラモトリギンは抗けいれん薬であるが、躁病よりもむしろうつ病の予防にはるかに有効だった。その頃からアキスカルとクーコプロスの双極スペクトラムが注目された。さまざまなタイプのスペクトラム概念が開発された。
アキスカルは亜型分類を強調した。1994年にDSM-4で双極Ⅱ型が正式に認められた。
クーコプロスは混合状態を強調した。he defined “mixed depression” as depression occurring with excitation, meaning manic symptoms (like flight of ideas or talkativeness), but also agitation, irritability and rage, marked anxiety, and suicidal impulsivity.
Koukopoulos saw this highly agitated and tense depressive state as the opposite of melancholia, which is markedly psychomotor retarded and not irritable or rageful. He thought that mixed depression gets much worse with antidepressants and responds to neuroleptics, while melancholia responds best to ECT and sometimes to antidepressants, but is best prevented with mood stabilizers like lithium. Other researchers,like Franco Benazzi in particular, studied mixed depression in detail and reported high rates in bipolar illness, but also notable rates in MDD. Working with Akiskal, Benazzi replicated his Italian findings in other settings.
mixed depression は bipolar にも MDD にも高い頻度で見られた。
アングストはMDDであっても、うつ病エピソードの約半数で躁状態を伴う混合状態が見られると報告している。
ガミーは古典的な単極性と双極性Ⅰ型との両極端の間に双極スペクトラムを置くことを提案した。この双極スペクトラムはレオンハルトの単極性うつ病のように反復性の重症うつ病を意味する。双極性障害の家族歴や抗うつ薬誘発性の躁状態が見られる。混合性またはメランコリックな特徴、発症年齢の早さ、エピソードの多さ、抗うつ薬に反応する、薬剤耐容能が低い、などを伴う。この定義ではMDDの約1/3が双極スペクトラムとなる。
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クーコプロスは躁病優位性仮説を提唱した。躁病は火であり、うつ病は灰である。クーコプロスは躁病とうつ病は常に一緒であり、両者を分離しようとするレオンハルトとDSM-3は間違っていると述べる。
クーコプロスの躁病優位仮説では、精神運動激越、著明な不安、気分変調症なども躁状態に含まれる。ほとんどすべてのうつ状態において、躁状態が先行または併発する。躁状態の特徴を持たない純粋うつ病は稀である。
先行するないしは併存する躁状態を気分安定薬や神経遮断薬で抑え込めば、うつ病は予防できる。抗うつ薬は穏やかな対症療法に過ぎない。うつ病の最良の治療は気分安定薬と神経遮断薬による予防である。
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境界性パーソナリティ障害は双極スペクトラムと関連して考えるべきものではない。
赤い空と赤いリンゴは色が全く異なるものである。赤いいう点だけが表面的に似ている。
双極スペクトラムは身体と脳の病気であり、生物学的異常があり、医学的モデルに忠実である。
境界性パーソナリティ障害はフロイト的解釈により理解されるものである。トラウマ、解離、転移、逆転移、投影、否認などによって理解される。
双極スペクトラムと境界性パーソナリティー障害は気分不安定と衝動性が共通するのみで、あとは異なる。These two clinical constructs are entirely different in their histories and key characteristics.
What is core to manic-depressive illness? Not mood lability.My view would be that psychomotor activation is central to manic-depressive illness, not mood per se. There is rapid thinking and feeling and movement, which sometimes can be related to impulsivity but often is not. In borderline personality, our modern version of hysteria, the key symptom feature is dissociation, which is related to the flashbacks and nightmares of that condition (which do not happen in MDI).
Psychomotor activation is central to MDI. といっている。
Another way of trying to better distinguish these conditions is to look at non-symptom features that increase the prior probability of the condition, even before looking at specific manic or dissociative symptoms. This approach greatly increases true positive diagnoses, and decreases false positives. In bipolar illness, those diagnostic accuracy-enhancing features include a family history of bipolar illness and a severe episodic course with duration of episodes being weeks to months. In borderline personality, those diagnostic accuracy-enhancing features include childhood sexual abuse and repeated non-suicidal self-injury. These features are multiple times more frequent in borderline personality than in bipolar illness.
かなり嫌がっている様子だ。